ヨウ素・セシウムとは?


 東京の他、各地での放射線観測の際、放射性物質の「ヨウ素」や「セシウム」が観測されました。この放射性物質とは何なのでしょうか?

 原子力発電の燃料はウランですが、このウランを核分裂させて発生する熱エネルギーを利用して水蒸気をつくり、その水蒸気によってタービンを回転させて電気をつくっているのが原子力発電です。




 上図はウランの核分裂を表しています。
核が二つに分裂し、熱エネルギーと2〜3個の中性子を発生させます。この二つの分裂片の片方が「ヨウ素」または「クセノン」または「セシウム」または「バリウム」という元素などです。もうひとつの分裂片は、一方がヨウ素ならば「イットリウム」、クセノンの片割れは「ストロンチウム」、セシウムの片割れは「ルビジウム」、バリウムの片割れはクリプトン」という元素になります。
これらの分裂片は、それぞれが強いエネルギーを持っています。強いエネルギーを持った分裂片はエネルギーを放出して安定しようとします。、この放出するエネルギーが放射線jになります。

 分裂片は燃料棒の中に閉じ込められていますので、原子炉から漏れ出ることはないのですが、今回の事故では燃料棒の一部が溶け出して分裂片が外部に漏れ、風に乗って広い地域に拡散されました。ですから、各地で観測されている放射性物質とは分裂片なのです。
分裂片にはすぐ気化してしまうものがあり、上記した分裂片のすべてが観測されるわけではありません。観測される代表的なものがヨウ素とセシウムで、今もテレビでこの二つの分裂片が水道水から観測されたと大騒ぎしています。
注意していただきたいのは、すべてのヨウ素やセシウムが放射性物質ではありません。(同じ元素でも同位体があり、放射性物質と安定したものがあります)

 燃料棒の中に分裂片がどの位あるのかは、ウランの核分裂がどれだけ起こったによって決まります。
例えば、10sのウランが核分裂を起こした時の分裂片の数を計算します。
まず、10sのウランには核がどれ位あるのか想像してください。1万個?、百万個?、1億個? とんでもありません。正解は、10兆×1兆個の核があります。しかし、このすべての核が核分裂を起こしているわけではなく、5%の濃縮ウランの場合では、この5%の核が分裂したことになります。つまり、10兆×400億個ですが、いずれにしても超大量です。
これらのすべてが外部に拡散したら、たとえその一部であっても超大量の拡散となります。
分裂片のひとつの重さは? と言いますと、10sを10兆×1兆×2で割ったのが重さです。だから目には見えません。
上記しましたが、分裂片はエネルギーを持っていますので、エネルギーを放出して身軽になろうとします。この放出したエネルギーが放射線です。分裂片がたくさんあるところは放射線量が多くなり、分裂片が少ないところは放射線量が少ないことになります。また、分裂片自体が崩壊して違う物質に変化し、その際にベータ線という放射線を出すこともあります。
再記しますが、10sのウランの分裂片は10兆×400億個あります。分裂片1個あたりの放射線量は超微量です。
たとえ10兆×400億個あっても、10キロメートル先に飛散すればこの距離の二乗に反比例して減衰(薄くなる)します。
それだけ拡散されるからです。ゆえに距離が遠くなればなるほど、放射線量が低くなるのはこのためです。

 ヒロシマの原子爆弾では、800グラムのウランが核分裂を起こしました。原子爆弾に使われるウランは100%純度の濃縮ウランですので、1兆×1兆×2の分裂片が発生しました。分裂片だけでなく、中性子線という放射線も大量に発せられました。


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