ウラン爆弾と水素爆弾の相違(核分裂爆弾と核融合爆弾)


 昔、小学生の頃だったと思いますが、「水の電気分解」の授業の時、水から水素と酸素を分解してつくりました。
試験管の中に溜まった水素に火を付ければボッと一瞬に燃えます。多少爆発した感じがしたことから、「水爆」とはこのようなもので、水素の濃度をもっと高めれば大きな爆発が起こり、これが水素爆弾の基本原理だろうと科学者気分になったことを覚えています。
しかしこれは大きな間違いで、水素爆弾の基本はそのような化学反応ではありません。

 ここでは、原子爆弾と水素爆弾の違いを説明します。

 ひとくちに言うと、原子爆弾は「核分裂」であり、水素爆弾は「核融合」です。
原子爆弾は、ウラン235やプルトニウムの核が分裂するときに生じるエネルギーを利用していますが、水素爆弾は逆に、水素の核が融合する、つまりくっつく時に生じるエネルギーを利用した爆弾なのです。
 水素爆弾のヒントは太陽のような恒星にありました。
「なぜ、太陽は何十億年も輝き続けられるのか?」という疑問から、「決して物が燃えているのではない。物が燃えているのであれば、数十年で燃え尽きるはずだ。」ということがわかり、「太陽の中心部では、水素同士が融合してエネルギーを発している。」という結論にたどりつきました。
だから水素爆弾の原理は、太陽が輝き続け、大量の熱を発散し続ける原理と同じなのです。
 
 水素の原子は1個の陽子と1個の電子からできています。だから水素はこの世で最も軽い元素です。しかし、水素元素には中性子は存在しません。
もっとも、水素のなかには、中性子が1個存在する「重水素」と、2個存在する「三重水素」というアイソトープがあり、実は水爆の原料は重水素や三重水素を用いているのですが、説明が難しくなるので、ここではこれらを説明しません。
要は、水素原子は1個の陽子しか持っていないため、核力(引力)が元素の中では最も小さく、核同士が融合し易い元素なのです。
宇宙が誕生した時は、水素しかなく、そのうち水素が核融合して陽子2個のヘリウムが誕生したと言われています。

 では、それだけ融合し易い水素であるなら、地球上にある水素は絶えず融合して、いつもエネルギーを出すようになるのか、というと決してそうではありません。
水素核が融合するためには大きな条件が必要です。それは「熱」と「圧力」です。
水素核を融合させるには、水素ガスの温度を1億度以上に、または圧力を地球の大気圧の1千億倍にしなければなりません。1億℃なのです。
鉄が溶ける温度は「たった 1500度」であり、溶鉱炉のなかでも「1600度」ぐらいですので、溶鉱炉の温度の6万倍の温度が必要なのです。
そんな超高温は、普通では考えられないし、自然ではつくることもできないから、地球上にある水素核は融合することはない。だから水素核が融合してエネルギーを放出することなど、一般的には起こらないのです。
 太陽の中心部では、この高温・高圧があります。
太陽は地球よりも遥かに大きな星であり、その中心部では物凄い圧力が生じています。圧力が大きくなれば温度が上がるのは自然の法則でありますから、太陽の中心部では水素核を融合させるだけの温度と圧力があり、だから核融合反応が生じているのです。

 では水素爆弾はどうやって核融合を起こさせるのか? という疑問が生じます。
石油を燃やしたところで発生する温度は1千度以下であり、火薬を爆発させても、とても1億度というような超高温にはなりません。
そこで使用されたのが、実は「原子爆弾」なのです。
水素核を融合させるために、原子爆弾の核分裂反応から生じる高温・高圧を利用しているのです。
つまり水素爆弾の仕組みは、ウラン238でできた爆弾容器のなかに「水素」(正確には「重水素化リチウム」)があり、その水素を核融合させるために原子爆弾も入れられています。
まず、原子爆弾が爆発(核分裂)し、その爆発によって生じる高温と高圧によって水素が核融合を起こしてエネルギーを発生し、そのエネルギーが他の水素核にも再度核融合を生じさせる核融合の連鎖反応が生じ、大きなエネルギーを生み出すのです。 つまり、核分裂爆弾が水素爆弾の起爆装置になっているのです。
さらに、これらの爆発によって生じた高温・高圧は、容器となっているウラン238にも核分裂を起こさせ、ウラン235の核爆発、水素爆弾の爆発、ウラン238の核爆発という3回の爆発が生じることになりますが、これら3回の爆発は1秒の何万分の一という瞬時に発生しますから、殆ど同時に爆発することになり、原爆の何千倍もの破壊力をもった爆弾になるのです。



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