原子力発電の仕組みとは?


 核分裂から発生するエネルギーを兵器に利用したのが「原子爆弾」で、このエネルギーを発電に利用しているのが原子力発電です。
 原子爆弾は核分裂の連鎖をいかに大きく継続させるか、またその継続をいかに短時間で行なうかが大きな課題であり、例えば1キログラムのウランにある1兆の1兆倍の数の原子核を僅か1億分の1秒で核分裂を終焉させなければなりません。一方、原子力発電は全く反対で、核分裂の連鎖を制御することが必要です。つまり原子力発電では、核分裂をいかにコントロール(制御)できるかが最大の技術課題であるわけです。




 核分裂の制御方法は、大きく分けて次の2点があります。

1.「減速材」によって中性子のスピードを減速させる
2.「制御棒」によって中性子の量を減らす

 まず 1.減速材 です。原子炉の中では、燃料棒のなかに入っているウランの核分裂によって中性子が物凄いスピードで飛び出しています。中性子のスピードが速すぎると核に衝突することが難しくなります。中性子のスピードを減速させれば核に衝突しやすくなり、それだけ核分裂の効率が良くなります。
 燃料棒は減速材の中に浸されています。減速材は中性子のスピードを落とすために備えられたもので、日本の原子炉では水が減速材として使用されています。水を使った原子炉を「軽水炉」と呼びます。他の減速材としては重水やグラファイトがあります。
 次に 2.制御棒です。 原子炉の中では核分裂によって生じた中性子が大量に存在し、この中性子が次から次に核に吸い込まれ、さらに核分裂が生まれる連鎖反応が継続されています。つまり、中性子の数が多ければ多いほど核分裂の連鎖が大きくなるわけで、中性子の数を減らせば核分裂の連鎖が小さくなります。しかし、余りにも中性子を減じてしまうと核分裂の連鎖自体が停止してしまうことになります。
つまり、原子炉の中の中性子数を一定の数に保ち、核分裂を最小限に抑え、継続かつ安定的に行えるだけの中性子数に減らす役目をするのが「制御棒」なのです。
制御棒は、「カドミウム」のように中性子を強く吸収し、しかも自体が核分裂を起こさない物質を用いています。この制御棒を原子炉の中に深く挿入すれば、原子炉の中の中性子は制御棒に殆どを吸い取られ、中性子が核に入ることがなくなるため核分裂が起こらなくなります。
制御棒を原子炉内から抜き取っていくと、中性子源から放出される中性子が引き金となって核分裂が開始され、再び核分裂連鎖反応が起こることになります。このように制御棒は、原子炉の中の核分裂連鎖反応を自在に制御できる機能を有しているものです。


 


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